ドミノ (http://www.domino-movie.jp)

実在した女性賞金稼ぎ、ドミノ・ハーヴェイをモデルにした映画。
尚、実はこの“モデル”というのが曲者なのですが、それはまた後ほど。


内容は、1,000万ドル強奪事件の容疑者(重要参考人?)として、FBIに捕まったドミノの取調べという形で、その事件の回顧を軸に、ドミノが如何にして賞金稼ぎになり、そして、如何にして生きたか、というあたりを描いた感じ。


ちょっと変わっているのは、時々ある、時間軸が割とぐちゃぐちゃという手法を使っている事。
ただ、この映画の場合は、最後までオチを判らせない為や、二度・三度見ても楽しめるようにする為の“技巧”ではなく、単に、語り手の思考パターンに合わせた“結果”という感じで、頭の中での時間軸の組みなおしは、全く問題ありませんでした。
むしろ、わかりにくいのは人間関係。というか、前半は非常にシンプルでわかりやすく、それに油断していると、後半、急に人間関係が複雑になって、気がついた時には、「えっと、この人は何だったっけ…?」という状態に急接近。
ずっと、引き込まれてみていたはずなのに、一瞬で人間関係が複雑化した時には、「まずい!」と思いました。
が、これも、観客の理解を促す工夫があり、何とか持ちこたえて、無事、映画終了。


とまぁ、描写周りの話が続きましたが、そのせいか、全編を通してクールな雰囲気があり、ちょっとカッコいい映画でした。
何も知らずに映画を見ると、短絡的に「ドミノ、カッコいい!」で感想は決まり。これなら、確実に今年のTOP10、どころか、TOP3に入る勢いです。


が、パンフを読めば判るのですが、実在する(した)ドミノ・ハーヴェイは、ドラッグ漬けで、自殺まがいの死に方をした人で、決して、他人から賞賛されるべき人生では無かった模様。
まぁ、当人的には、別に他人の賞賛に値する生き方をしたいと思っていた訳では無いと思うので、そこをとやかく言うツモリは無いのですが。
ただ、あまつさえ、自叙伝と思えてしまうこの映画が、そうではなく、ドミノを美化したフィクションであるのを忘れがちになってしまうのは、如何なものかと。
少なくとも、本当の賞金稼ぎとは、きっと、もっとドロドロした、陰鬱した世界なのではないかと…。そして、そういう現実を忘れて「カッコいい世界」と錯覚しがちになるところが、少し危険に思われました。
まぁ、見方を変えると、話は全く逆で、そういう一般大衆が知る必要も無い影の部分を隠すべき美化をした…という話なのかもしれませんが。


ちなみに、この映画、筆者は、Bjorkの「Hyper-ballad」と同じ匂いを感じ、何故か、不思議と、見終わった後に、寂しさを感じました。