楽しい日記のつけ方
文章芸・その9
トラップ。
これまた、普通一般の自分用日記には無く、web日記に良く見られる技巧。
というか、普通、自分で自分にトラップを仕掛ける事はありえない(笑)。
とりあえず「トラップ」と名づけてみたが、要するにこれは引っかけ。
子供が良く、「わ〜〜い、引っかかった!引っかかった!」と喜んでいる、アレである。
では、例文。
例1
杏さゆり系の美女を見かけました。
例2
杏さゆり似の美女を見かけました。
例3
思わず杏さゆりかと思ってしまいそうになる美女を見かけました。
例4
あの女の人、思わず杏さゆりかと思ってしまいました。
似た表現ばかりだが、結論から言えば、読者が杏似を期待して良いのは2と4だけ。
1は多分似てない(似てれば、系ではなく、似と書く)。
そして3も、おそらく似てない方*1。
で、一見するとその分け方に異議を唱えたくなるという点で、3がトラップという寸法。
まぁ、これだけだと、何を言いたいのかわからないと思うが、要はこういう回りくどい表現を多用する事で、読者をあらぬ妄想に誘導し、最後で「え?そう思ってた?でも、僕はそんな事一言も書いて無いし」という感じでギャフンと言わせるのが「トラップ」の醍醐味である。
難しい例から入ってしまったので、もっと安易な例も挙げておく。
例えば、「好き」と「嫌い」は反対語だと思うが、「好き」と「嫌いでない」は同義ではない。
一般には、それが重要な問題になる事は少ないと思うが、例えば「興味が無い」場合に、「どちらかと言えば嫌い」と書かずに「嫌いではない」と書くと、おそらく読み手的にはトラップになる^^;
或いは、「暑い」と「寒い」。
同様に「暑くない」と「寒い」が同義で無いのは明白だが、「暑くない」と書けば、一般人は「そもそもは暑いと思っていたのにそうではなかった」というようなイメージを持ち、季節的には夏などを連想しやすい。
が、別に季節を明示していなければ、冬にそういう表現を用いても、日本語的にはウソではない。
これもトラップである。
もっとも、書き手的には巧みな罠を張り巡らせて、最後で「え?」と思わせる展開は“楽しい”かもしれないが、読み手的には、深読みを強要される日記はあまり“楽しくない”事が多いので要注意(笑)。
*1:一応、解説しておくが、3は杏似と読み取りそうになるが、「思った」ではなく「思いそうになる」という点で、「ちょっと違ってがっかり」が行間にあると推測される。
という訳で、これは杏似では無い。